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バイクに乗ると脳が活性化するのか?二輪の可能性!

バイクは自己満足の乗り物とよく言われます。確かに最大でも2人しか乗れませんし、積載量も少ないため、単なる運搬や移動目的だけで言えばその通りかもしれません。

実際、ライダーの多くがそのあたりを十分理解した上で、それでもバイクに乗る喜びや楽しみを知ってしまっているからこそ乗り続けてるのではないでしょうか?

しかし、実はバイクに乗ると脳が活性化するという研究がなされていたことをご存知でしょうか?今回はこの研究についてご紹介したいと思います。

人気記事ランキング第1位に!

一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)が二輪車に関する情報発信をするために公式Webサイトに開設している「MOTOINFO(モトインフォ)」をご存知のライダーも多いかと思います。

実はそのMOTOINFOに掲載された記事の中で、「若者にも知って欲しい!10年以上前に⾏なわれていた世界初の実証実験『バイクに乗ると“脳が活性化”する!』で出た結果とは?」という記事が2022年度上半期(2022年4月〜9月)の人気記事ランキング第1位となったのです。

このことがきっかけでSNSを中⼼に⼤きな反響があったことから、今になり10年以上前に行われた研究が再び脚光を浴びているのです。

バイクと脳の活性化の関係性

2009年3月4日に、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授(以下川島教授)によって、世界初となる「二輪乗車と脳の活性化の関係」の実験が行われました。

もともとこの実験は某二輪メーカーのマーケティング担当者が市場調査のために高速道路のサービスエリアを観察していた時に、当時ライダーの年齢構成で多くを占める中高年ライダーがまるで少年のような笑顔で会話する姿を見て、もしかしたらバイクに乗ることによって、若々しくさせる効果があるのでは?との疑問を東北大学に持ち掛けたことから始まったそうです。

具体的にはどういったものなのでしょうか。順番に見ていきましょう。

前頭前野の働きは20歳から降下

川島教授によると、人の脳の前頭前野は、脳の中の脳とも呼ばれており、記憶や学習の他、社会生活を健全に営む上でカギとなる機能がここに宿っているそうです。

しかし、過去の様々な認知機能テスト(ヒトのこころの働きを調べるための心理学的検査)からなんと20歳からこの能力が降下し始めることがわかっているそうです。

20歳と言えばまだまだ若いイメージなので、少し驚きですね。

実証事件には問題が山積み

つまりこの20歳から働きが下降し始める前頭前野の働きが、バイクに乗る事によって活性化している事を計ることができるか?というのがこの実験のスタートとなったわけです。

しかし、その実証実験の検討を進める中で早くもヘルメットによる問題に直面したそうです。ヘルメット装着が必須なバイクにおいて、当時はヘルメットに収まる小型サイズの計測器がまだ存在しておらず、その計測器の完成を数か月待たなければならなかったからだそう。

さらにこの小型サイズの計測器を装着しても、その上から被れる大きなヘルメットも存在しなかったのですが、偶然にも某人気横綱力士がバイクに乗ろうとヘルメットメーカーに特注した巨大なヘルメットがキャンセルされて在庫として残っており、それを譲っていただくことが出来たということです。

実験チームの方々は計測器の完成を待ちながら平行して、走行コースの手配や被験者の募集を始めたそうです。

やはり実証実験を行うには大変な下準備が必要なのですね。

2グループでの実証実験

川島教授らの実証実験には現役のライダー11名と二輪免許を保有しているものの普段はバイクに乗っていない元ライダーの10名といった被験者にて行われました。

これは、しばらく乗っていなかったライダーが、再びバイクに乗り始めることでどのように脳が変化するかというのを普段からバイクに乗っているライダーと比較するためだったそうです。被験者には通常走行に必要なプロテクターの装着と頭には計測器の上にヘルメットを装着してもらい、サーキットコースの外周路バイクで走行してもらい、走行中の脳の計測データは、適宜発信され、追走するクルマでデータを受信回収していたそうです。

バイクに乗ることで脳は活性化していた!

こうして世界初のバイクと脳の関係を調べる実証実験が行われました。

その結果、バイクに乗ることで前頭前野の血液が活性化されていることが確認されたそうです。

また、同時に、現役ライダーと元ライダーの両被験者で脳の使い方に面白い違いがみられたそうです。それは、現役ライダーは言語的思考を司る左脳の活動が高く理論的に走行しているのに対し、元ライダーは非言語的思考を司る右脳の活動が高く直感的な思考運転操作をしている傾向が見られたということです。

これは現役ライダーはある程度予測に基づいた走りをしている一方で、元ライダーは勘に頼るような走りをしているということなんだそうです。

認知機能の改善、ポジティブ効果も!

川島教授らは免許保有者で現在はバイクに乗っていない男性11名ずつ、2グループの合計22名で、2か月にわたって日常的にバイク利用するグループと、そのままバイクを利用しない生活をするグループとに分けて認知機能検査とメンタルテストを実施するという実験も行っています。

その結果、認知機能における明らかな改善及びメンタル面において明らかにポジティブ効果が現れていることが確認されたと言います。

まとめ

すでに10年以上前の実験にはなりますが、バイクに乗ることが脳を活性化することが判明しました。

冒頭でも述べたように単なる趣味の乗り物と言われることも多々あるバイクですが、こういった研究が進むことでバイクに興味がなかった人たちが、バイクに乗るきっかけになり、さらに二輪業界が盛り上がるといいですね。